CASE STUDY 08 | SC相模原

相模原・新スタジアム問題
——ホームタウンを越え隣市へ、両市長が公費を拒否

基準を満たすスタジアムを持てぬまま10年以上。ついにクラブは、ホームタウンの相模原市を飛び越え、 隣の海老名市にJ1規格1.5万人スタジアムを求めました。しかし相模原・海老名の両市長はそろって公費負担を否定。 「誘致される側の税金」を当てにする構図が、首長自身の言葉で拒まれています。

対象期間:2013年〜2026年5月/進行中の案件です
相模原ギオンスタジアム
現在のホーム「相模原ギオンスタジアム」(新スタジアムは未建設) 写真:Waka77(CC0)/ Wikimedia Commons
WHY IT MATTERS

問題の背景

SC相模原の現ホーム「相模原ギオンスタジアム」(相模原麻溝公園競技場、相模原市所有)は、 両サイドが芝生席のためJリーグ開催時の実収容は約6,291人で、J2基準(1万人以上)に届きません。 2013年のライセンス制度導入以来、「駅近の新設」を求めるクラブと、「民設民営」を条件とする相模原市の折り合いが つかないまま、10年以上が過ぎました[1]

この事例の異例さ 2025年、クラブはホームタウンの相模原市ではなく、隣接する海老名市を候補地とするJ1規格スタジアム計画を Jリーグに提出しました。「地域密着」を掲げるJリーグで、ホームタウンを越えて別の市に公共スタジアムを求める——。 その海老名市の市長さえ「市は費用を負担しない」と明言し、公費依存の前提が根底から否定されています。
約6,291
実収容(J2基準1万人に届かず)
隣市に
1.5万人
海老名市に求めたJ1規格スタ
両市長
「負担せず」
相模原・海老名とも公費を否定
TIMELINE

時系列(2013 → 2026)

2013年

ライセンス制度導入で基準未達に

Jリーグクラブライセンス制度の導入で施設基準が厳格化し、麻溝公園競技場がJ2基準を満たせなくなる。スタジアム問題の起点。

出典:note(スタジアム問題まとめ)
2014年

J1改修試算77.8億円、市と協議開始

J1基準への改修は設計・管理費込みで約77.8億円と試算。クラブが相模原市との協議を開始する。

出典:note/hojyokin.site
2020年9月28日 ★

J2ライセンス取得(例外規定・5年以内に新設が条件)

「5年以内に新スタジアムを新設」を条件とする例外規定の適用でJ2ライセンスを取得。以後、この“宿題”が重くのしかかる。

出典:相模原町田経済新聞/hojyokin.site
2021年2月12日

建設署名10万4,201筆を市長へ提出

新スタジアム建設を求める署名を相模原市長に提出。世論の後押しを示す。

出典:hojyokin.site
2021〜2022年

DeNAが経営参画→連結子会社化、海老名を広域ホームタウンに

2021年にDeNAが協賛・出資で参画し、クラブは海老名市を広域ホームタウンに追加。2022年10月にはDeNAが株式74.2%を取得し連結子会社化した。

出典:SC相模原公式/日本経済新聞(2022.10.26)
2023年10月24日

整備計画の提出期限を「2025年6月末」へ延長

Jリーグが例外規定の整備計画提出期限を2025年6月末に延長。“宿題”の締め切りが先送りされる。

出典:hojyokin.site
2025年5月19日

市の土地利用計画にスタジアムが盛り込まれず

相模原市が補給廠返還地などの「土地利用計画骨子」を公表するが、スタジアム整備は含まれず。これがクラブの候補地変更の引き金となる。

出典:hojyokin.site/タウンニュース
2025年6月30日 ★★

ホームタウンを越え、海老名市でのJ1規格計画をJリーグに提出

海老名市内を予定地とするJ1基準1万5,000人収容の多目的スタジアム計画を提出。同日夕、西谷社長が相模原市長へ電話で移転を通知した。 ただし事業者・スキーム・具体構想は「未定」とされた。

出典:タウンニュース(2025.7.3)/note
2025年7月2日 ★

相模原市長「率直に残念」「相談はいつもぎりぎり」

本村市長が定例会見で遺憾を表明。市は複数の代替候補地と既存施設の改修案を提示していたが、条件は民設民営で、 クラブが駅近立地を優先して折り合わなかったと説明した。

出典:タウンニュース(2025.7.5)/神奈川新聞
2025年7月25日 ★★

海老名市長「市は費用を負担しない」

誘致される側の内野市長が会見で「スタジアムの施設整備に市が費用を負担することはない」と明言。維持管理も担わない意向を示した。 公費依存の前提が、受け入れ自治体の首長自身に否定された。

出典:カナロコ(神奈川新聞・2025.7.25)
2025年9月25日

Jリーグ「実現可能性は十分な確度を持つとは言えない」

例外適用を継続してJ2ライセンスを交付する一方、計画の確度不足を指摘し、提出期限を2026年11月末へさらに1年延長。 基準未達のまま計画だけで延命する構造が続く。

出典:SC相模原公式/相模原町田経済新聞(2025.9.25)
2026年4月

運営会社が債務超過を解消——親会社DeNAの支援を示唆

2026年1月期決算で純資産がプラスに転じ債務超過を解消。前期の固定負債10億円が消滅しており、親会社DeNAによる 債務免除相当の財務支援が推察される。自立採算の力はなお不透明。

出典:Football Tribe Japan(2026.4)
2026年5月26日

J2ライセンス交付、詳細計画の提出を2026年11月まで要求

2026/27シーズンのJ2ライセンスを取得。海老名市内・J1基準1.5万人規格について「場所・予算・整備主体を明記した 具体的整備計画」を2026年11月までに提出するよう求められている。

出典:タウンニュース(2026.5.27)
ANALYSIS

この事例が問いかけること

批判の視点 「地域密着」を掲げながら、ホームタウンの市が条件(民設民営)を示すと、より好条件を求めて隣の市へ——。 これはクラブの都合で自治体を“はしご”する動きに見える。しかも誘致先の海老名市長さえ「費用は負担しない」と明言した。 現スタジアムを満員にもできず、親会社の支援で債務超過をしのぐクラブが、公有地・行政協力を前提に1.5万人規格を求める。 Jリーグ自身が「実現性に確度がない」と認める計画を、いつまで延命させるのか。
反論・擁護の視点 駅からのアクセスは集客とスタジアム経営の成否を左右する死活問題で、立地にこだわるのは合理的でもある。 相模原市がスタジアム用地を土地利用計画に position づけなかった以上、クラブが実現可能な候補地を域外に探すのは やむを得ない面がある。海老名市が「費用負担しない」としたのは、むしろ民設民営が徹底される証左とも読める。

相模原のケースは、「ホームタウンとは何か」「公共スタジアムを誰の税金で建てるのか」という問いを、 最も先鋭な形で突きつけます。両市長が公費を否定したいま、本当に民間だけで1.5万人規格を建てられるのかが、 これからの焦点です。

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SOURCES

出典

  1. タウンニュース(2025.7.3/7.5、2026.5.27)/カナロコ・神奈川新聞(2025.7.25 海老名市長発言)/相模原町田経済新聞(2020.9、2025.9.25)/SC相模原公式(2022.10.26、2025.9.25)/日本経済新聞(2022.10.26)/Football Tribe Japan(2026.4)/note・hojyokin.site(経緯まとめ)。
進行中の案件を報道・公表資料に基づき整理したものです。現スタジアムのJ2改修費「約50億円」や海老名の事業スキーム(民設民営か)は一次出典が弱く、本文では確定情報として扱っていません。収容人数は資料により6,259/6,291人の差があります。最新情報は各一次資料でご確認ください。特定の個人・団体を誹謗中傷する意図はありません。