CASE STUDY 04 | 水戸ホーリーホック

水戸・新スタジアム構想
——「民設」から「公設」、そして新設断念へ

約100億円の民設民営構想として始まった新スタジアム計画は、建設費が150〜200億円に膨らんで公設方式へ転換。 しかし市長は「市民の理解が得られない」と拒否し、最終的に新設は断念——。「身の丈」と「税金依存への傾斜」を 問う、税リーグ問題の教訓的なケースです。

対象期間:2019年11月〜2026年2月/一区切りついた事例です
ケーズデンキスタジアム水戸
現在のホーム「ケーズデンキスタジアム水戸」(新設は断念し県有施設へ移転) 写真:WAKA77(パブリックドメイン)/ Wikimedia Commons
WHY IT MATTERS

問題の背景

水戸ホーリーホックの現ホーム「ケーズデンキスタジアム水戸」(水戸市立競技場、水戸市所有・約12,000人)は、 J1基準の15,000席に届きません。クラブは2019年、「民間で建てる」民設民営の専用スタジアム構想を打ち出しました。 ところが計画は迷走し、当初「自前で建てる」としていたはずが、いつしか自治体(税金)頼みへと傾いていきます[1]

このケースが示す教訓 ①「民設民営」で始めても、建設費の高騰で公設(税金)に転換しがちであること ②当初見積り(約100億円)が倍近く(150〜200億円)に膨らむこと ③行政(市長)が明確に「NO」と言えば、過大な構想は止まること。 税リーグ問題の“力学”が凝縮されています。
100→200億円
建設費見積りの膨張(2019→2024)
「理解
得られぬ」
公設を拒否した市長の言葉(2025.2)
新設
断念
県有施設へ移転で決着(2026.2)
TIMELINE

時系列(2019 → 2026)

報道・クラブ公表資料をもとに、主な出来事を時系列でまとめました。★は特に大きな転換点です。

2019年11月22日 ★

専用スタジアム構想を公表(民設民営・約100億円)

沼田邦郎社長が会見。1.5万〜2万席・4方向屋根、教育/福祉/防災の複合型で、総工費約100億円、 クラブ創設30周年の2024年完成を目標に掲げた。あくまで「民設民営」での建設を打ち出す。

出典:日本工業経済新聞/茨城新聞/日本経済新聞(2019.11)※会見日は媒体により11/22・11/25の振れあり
2019年11月(同時期)

水戸市が既存施設の改修計画を撤回

クラブが市との協議のないまま民設スタジアムを突然発表したことを受け、市は進めていた市立競技場の改修を取りやめ。のちの対立の火種となる。

出典:note・東京サッカーチャンネル(経緯まとめ)
2022年秋(進捗会見)

竣工を2028年度へ後ろ倒し

コロナ禍・資材高騰を理由に完成目標を2024年→2028年度に。「2024年度に候補地発表→2026年度着工→2028年度竣工」のロードマップを示し、候補地を水戸市外にも拡大する方針に。

出典:note・東京サッカーチャンネル/Wikipedia
2024年4月 ★★

「民設民営」→「公設」へ方針転換、費用は150〜200億円に

人件費・建設費の高騰を理由に、ホームタウンの市町村が建設する公設方式へ転換。試算は約100億円から 150〜200億円へ膨張。協議相手を水戸市+ホームタウン15市町村+茨城県へ拡大した。 「自前で建てる」という当初の前提が崩れた、決定的な転換点。

出典:日本経済新聞(2024.4)/Wikipedia
2025年1月30日 ★

社長が計画の見直し・延期を表明(事実上の白紙)

小島耕社長が、候補地は未確定、2028年竣工予定を延期と表明。「水戸市に限定せず15市町村で候補地を選定」 「既存施設の改修案も視野」とし、100億円級の新設構想は大きく後退した。

出典:デイリーホーリーホック/水戸ホーリーホック公式(2025.1)
2025年2月25日 ★★

市長が公設を明確に拒否「市民の理解が得られない」

高橋靖・水戸市長が定例会見で、「今、新たに200億円のハード事業を持ち込むのは全く市民理解が得られない」と明言。 既存施設の改修についても「『自分の金でやって』と言わざるを得ない」と述べ、協議なき発表→市の改修撤回という経緯にも不快感を示した。

出典:茨城新聞(2025.2.25)/Football Tribe Japan
2025年9月25日

JリーグがJ1ライセンスを特例交付(2028年11月末まで)

新スタジアム未整備のまま、スタジアム特例条項付きでライセンスを付与。期限までの供用開始などが条件とされた。

出典:Wikipedia(水戸ホーリーホック)
2026年2月27日 ★★

新設を断念、県有施設へ移転で決着——改修費はクラブ全額負担

茨城県が、笠松運動公園陸上競技場(那珂市・収容約22,002人、愛称「水戸信用金庫スタジアム」)の 2026/27シーズンからのホーム使用を承認。県・県陸協との覚書を結び、Jリーグ基準を満たす改修費はクラブが全額負担、 交通対策なども負う。約7年に及んだ100億円級の新設構想は、事実上ここで一区切りついた。

出典:サッカーキング/水戸ホーリーホック公式リリース/ゲキサカ(2026.2.27)
ANALYSIS

この事例が問いかけること

批判の視点 「民設で建てる」と大々的に発表しながら、建設費が膨らむと自治体負担の「公設」に切り替える——。 この転換こそ、税リーグ批判が最も警戒する動きだ。市長が「市民の理解は得られない」と拒否しなければ、 200億円の公費負担が既定路線になっていた可能性がある。
反論・擁護の視点 資材・人件費の高騰は全国共通で、当初見積りが実勢に合わなくなるのはやむを得ない面もある。 最終的に新設を断念し、既存の県有施設の改修費をクラブが全額負担する形に落ち着いたのは、 「身の丈に合った」現実的な着地とも評価できる。

水戸のケースは、「行政がきちんと費用対効果を問えば、過大な公費負担は避けられる」ことを示す好例です。 同時に、クラブと自治体が事前に協議せず構想を発表したことが長い迷走を招いた教訓も残しました。

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SOURCES

出典

  1. 日本工業経済新聞/茨城新聞/日本経済新聞(2019.11 構想公表):規模・機能・総工費約100億円・2024年完成目標。
  2. 日本経済新聞(2024.4)/Wikipedia「水戸ホーリーホック」:公設方式への転換・150〜200億円への膨張・協議先の拡大。
  3. 茨城新聞(2025.2.25)/Football Tribe Japan:高橋靖市長の公設否定発言。デイリーホーリーホック/クラブ公式(2025.1):社長の見直し・延期表明。
  4. サッカーキング/ゲキサカ/水戸ホーリーホック公式リリース(2026.2.27):笠松運動公園への移転承認・改修費クラブ全額負担。
報道・クラブ公表資料に基づき時系列に整理したものです。会見日・金額などは媒体により差がある場合があり、最新情報は各一次資料でご確認ください。「企業版ふるさと納税」を用いた資金スキームは一次情報を確認できず本ページでは扱っていません。特定の個人・団体を誹謗中傷する意図はありません。