約100億円の民設民営構想として始まった新スタジアム計画は、建設費が150〜200億円に膨らんで公設方式へ転換。 しかし市長は「市民の理解が得られない」と拒否し、最終的に新設は断念——。「身の丈」と「税金依存への傾斜」を 問う、税リーグ問題の教訓的なケースです。
水戸ホーリーホックの現ホーム「ケーズデンキスタジアム水戸」(水戸市立競技場、水戸市所有・約12,000人)は、 J1基準の15,000席に届きません。クラブは2019年、「民間で建てる」民設民営の専用スタジアム構想を打ち出しました。 ところが計画は迷走し、当初「自前で建てる」としていたはずが、いつしか自治体(税金)頼みへと傾いていきます[1]。
報道・クラブ公表資料をもとに、主な出来事を時系列でまとめました。★は特に大きな転換点です。
沼田邦郎社長が会見。1.5万〜2万席・4方向屋根、教育/福祉/防災の複合型で、総工費約100億円、 クラブ創設30周年の2024年完成を目標に掲げた。あくまで「民設民営」での建設を打ち出す。
クラブが市との協議のないまま民設スタジアムを突然発表したことを受け、市は進めていた市立競技場の改修を取りやめ。のちの対立の火種となる。
コロナ禍・資材高騰を理由に完成目標を2024年→2028年度に。「2024年度に候補地発表→2026年度着工→2028年度竣工」のロードマップを示し、候補地を水戸市外にも拡大する方針に。
人件費・建設費の高騰を理由に、ホームタウンの市町村が建設する公設方式へ転換。試算は約100億円から 150〜200億円へ膨張。協議相手を水戸市+ホームタウン15市町村+茨城県へ拡大した。 「自前で建てる」という当初の前提が崩れた、決定的な転換点。
小島耕社長が、候補地は未確定、2028年竣工予定を延期と表明。「水戸市に限定せず15市町村で候補地を選定」 「既存施設の改修案も視野」とし、100億円級の新設構想は大きく後退した。
高橋靖・水戸市長が定例会見で、「今、新たに200億円のハード事業を持ち込むのは全く市民理解が得られない」と明言。 既存施設の改修についても「『自分の金でやって』と言わざるを得ない」と述べ、協議なき発表→市の改修撤回という経緯にも不快感を示した。
新スタジアム未整備のまま、スタジアム特例条項付きでライセンスを付与。期限までの供用開始などが条件とされた。
茨城県が、笠松運動公園陸上競技場(那珂市・収容約22,002人、愛称「水戸信用金庫スタジアム」)の 2026/27シーズンからのホーム使用を承認。県・県陸協との覚書を結び、Jリーグ基準を満たす改修費はクラブが全額負担、 交通対策なども負う。約7年に及んだ100億円級の新設構想は、事実上ここで一区切りついた。
水戸のケースは、「行政がきちんと費用対効果を問えば、過大な公費負担は避けられる」ことを示す好例です。 同時に、クラブと自治体が事前に協議せず構想を発表したことが長い迷走を招いた教訓も残しました。