CASE STUDY 14 | ロアッソ熊本

熊本・新スタジアム構想
——県営スタジアムがあるのに「市外も想定」の打診

県所有の約3万席スタジアムがありながら、アクセスの悪さを理由に、クラブは「熊本市以外の自治体も想定」と表明。 より有利な立地と公的支援を求めて周辺自治体に打診する姿勢を見せます。しかし県は「建設費は多額」「現状で規程をほぼ満たす」と慎重で、 構想は2年以上、宙に浮いたままです。

対象期間:2023年1月〜2025年3月/構想は停滞中です
えがお健康スタジアム
現在のホーム「えがお健康スタジアム」(新スタジアムは構想段階) 写真:K.F.(CC BY-SA 3.0)/ Wikimedia Commons
WHY IT MATTERS

問題の背景

ロアッソ熊本(J2)の現ホーム「えがお健康スタジアム」(熊本県民総合運動公園陸上競技場、熊本県所有・約3万席)は、 収容規模ではJリーグ規程をほぼ満たします。しかし陸上トラック併設で観戦環境に難があり、何より交通アクセス・駐車場が 課題です。運営会社アスリートクラブ熊本は、これを理由にサッカー専用の新スタジアムを検討しています[1]

この事例の論点——「より有利な公的支援を探す」動き 現ホームは県が保有・支援しているのに、クラブは「熊本市以外の自治体も想定」と公言。 複数自治体を視野に、より有利な立地・公的支援を引き出したい思惑がうかがえます。 一方で県は費用対効果に疑問を示し、公費新設に距離を置く——「誰が負担するのか」が定まらないまま膠着しています。
約3万席
現ホーム(県所有)の規模
「市外も
想定」
クラブが他自治体に打診
2年+
具体案が定まらず停滞
TIMELINE

時系列(2023 → 2025)

2023年1月28日 ★

クラブが「新スタジアムは熊本市以外も想定」と公表

AC熊本(当時・永田求社長)が、新スタジアム建設で熊本市以外の自治体も想定して準備中と表明。 えがお健康スタジアムの交通利便性を問題視し、空港アクセス鉄道の中間駅計画が採用されなかったことも背景にあるとされた。 具体的な対象自治体・事業費・事業形態は示されなかった。

出典:熊本日日新聞(2023.1.28)※本文会員限定・一部未確認
2023年4月

新社長就任、TSMC進出の波及も

AC熊本の新社長に藤本靖博氏が就任。同時期、TSMCの菊陽町進出を機に県北の半導体経済とクラブの結びつきが生まれ、 新規スポンサー獲得の動きも出た。

出典:ロアッソ熊本公式/熊本日日新聞(2023.4)
2025年2月13日

専用スタジアム構想は「具体的な動きなし」と指摘

県内では新八代駅前アリーナ、バスケ・ヴォルターズの専用アリーナ、プロ野球独立L球場など他のスポーツ施設が前進する一方、 ロアッソの専用スタジアムだけが停滞していると考察された。

出典:ファンサイト「ロアマガ」(2025.2.13)
2025年3月1日 ★

アンケートで「アクセス不満」最多、改善策トップは「新スタジアム」

熊本日日新聞のアンケートで、639件の回答の約半数(314件)がえがスタでの観戦に「不満」。 改善方法として最も多かったのが「新スタジアム」建設だった。世論としての要望が可視化される一方、 クラブの具体的な資金計画は示されないままだった。

出典:熊本日日新聞(2025.3.1)
(県の公式見解)★

熊本県は慎重——「建設費は多額」「現状で十分」

県は公式Q&Aで「陸上競技場はJリーグ規程をほぼ満たす」「地域活性化連携協定で優先使用などを支援中」 「具体的な専用スタジアム建設の動きはない」「民間の機運が高まり機が熟せば検討」と回答。さらに 「他自治体の試算では建設費が多額に上るとも聞いており、県は現在の支援を続けたい」とし、公費新設に明確に距離を置いた。

出典:熊本県ホームページ(Q&A)※更新日は未確認
対象自治体として観測レベルで菊陽町・大津町の名が挙がることがありますが、両町が公式に誘致を表明した事実は確認できていません【未確認】。 ただし同じ県北・TSMC経済圏では、県営野球場(藤崎台)の移転をめぐって2市2町が誘致に名乗りを上げる「誘致合戦」が現実に進行しており、 スタジアム誘致が起きやすい土壌があること自体は確かです。
ANALYSIS

この事例が問いかけること

批判の視点 県がすでに約3万席のスタジアムを保有し、優先使用などで支援しているのに、クラブは「市外も想定」と、 より有利な公的支援を求めて他自治体をうかがう。世論の「不満」を背景に新設要望だけが先行し、 クラブ自身の具体的な資金計画は示されない。「誰の税金で建てるか」を曖昧にしたまま、 機運づくりが進む典型的なパターンだ。
反論・擁護の視点 アクセスの悪さは集客とクラブ経営に直結する深刻な問題で、専用スタジアムを求めること自体は正当だ。 むしろ県が「建設費は多額」と慎重に構え、安易に公費を約束していない点は、税金の使い方として健全とも言える。 クラブが複数の可能性を探るのは、実現性のある立地を見極めるうえで合理的でもある。

熊本のケースは、「アクセス難の既存スタジアム」と「身の丈を超えかねない新設要望」の間で、 自治体がどこまで公費を約束すべきかを問います。県が慎重姿勢を崩さない限り、 この構想は「民間資金でどこまで描けるか」にかかっています。

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SOURCES

出典

  1. 熊本日日新聞(2023.1.28「熊本市以外も想定」、2023.4 TSMC波及、2025.3.1 アンケート)/ロアッソ熊本公式(2023.4 社長就任)/熊本県ホームページ(専用サッカー場に関するQ&A)/ファンサイト「ロアマガ」(2025.2.13)。※熊日の主要記事は会員限定で詳細は一部未確認。県Q&Aの更新日、菊陽町・大津町の誘致(観測レベル)、事業費の公式試算は未確認。
公開情報に基づく検証です。新スタジアムの立地・規模・事業費・事業形態はいずれも未確定で、誘致自治体に関する情報は観測にとどまるため断定を避けて記述しています。最新情報は各一次資料でご確認ください。特定の個人・団体を誹謗中傷する意図はありません。