約9.6万筆の署名、県の基本計画(総事業費110〜120億円)まで進みながら、知事の「県の負担が大きい」の一言で凍結——。 2022年に天皇杯を制しACLに出場しても、自前スタジアムはできませんでした。このケースは、 「行政が税金投入を拒んだ」という、税リーグ問題のもう一つの側面を映します。
ヴァンフォーレ甲府の現ホーム「JITリサイクルインクスタジアム」(山梨県小瀬スポーツ公園陸上競技場、山梨県所有)は 陸上トラック併設で、観戦環境に課題があります。専用スタジアム構想は2014年の署名運動に始まり、県が基本計画まで 策定しましたが、「県の負担が大きい」として2019年に凍結されました[1]。
山本知事が専用スタジアムの早期建設を公言するも、12月県議会で「予算的に厳しい」と撤回。以後、構想は長く塩漬けに。
サッカー・ラグビー・アメフトなどの団体とクラブが共同で署名運動を展開し、横内知事らに提出。「10万人に近い署名の重みをくみ取ってほしい」と訴えた。
収容2万人、建設費76〜140億円、候補地は「小瀬スポーツ公園周辺」と「リニア中央新幹線・駅南側(大津町)」の2案が示される。
リニア駅周辺より土地取得費で有利と説明。しかし県議会からは「独断的決定」「収支が見えない」との反発も出た。
総事業費110〜120億円、年間運営費1.3〜1.4億円、ネーミングライツ収入を差し引いた県の実質負担は年5千万〜8千万円と試算。 公費負担の構造が数字で明確になった。
長崎幸太郎知事が「県の負担が大きい」として計画を白紙化・見直し。積み上げてきた構想は、行政トップの判断で凍結された。
クラブが天皇杯で日本一に輝きACL出場権を獲得。しかし現スタジアムがAFC基準(背もたれ席・VIPルーム等)を満たさず、 ACLは国立競技場など県外で「間借り」開催。成功と施設のミスマッチが露呈した。
県が県議会で「持続可能性なき建設」として、専用スタジアム建設に否定的な見解を示したとされる。凍結姿勢は続いた。
行政に深く頼らない「民設民営」で、1.5万〜2万人規模のコンパクトな専用スタジアムを提唱する民間任意団体が発足。 候補地はリニア中央新幹線・山梨県駅(仮称)前。英ボーンマスのスタジアムをモデルにした。県主導構想の停滞を、民間が引き取る形となった。
甲府のケースは、税リーグ問題が「公費を出すか出さないか」の単純な善悪ではないことを教えてくれます。 出さない判断にも、出す判断にも、それぞれの責任と説明が求められる——そのことを最もよく示す事例です。