CASE STUDY 06 | 鹿児島ユナイテッドFC

鹿児島・新スタジアム問題
——8年迷走、候補地二度の白紙化と200億円超

2017年の検討開始から8年。ドルフィンポート跡地案は県が拒否し、続く北ふ頭案も断念——。候補地は二度も 振り出しに戻りました。残る2案はいずれも総事業費200億円超で、駐車場はわずか146台。財源の分担すら 決まらないまま、数字だけが膨らんでいます。

対象期間:2017年3月〜2026年7月/進行中の案件です
白波スタジアム(鹿児島県立鴨池陸上競技場)
現在のホーム「白波スタジアム」(新スタジアムは未建設) 写真:Kanko3131(CC BY-SA 3.0)/ Wikimedia Commons
WHY IT MATTERS

問題の背景

鹿児島ユナイテッドFCの現ホーム「白波スタジアム」(県立鴨池陸上競技場、鹿児島県所有・約1.5万人・1970年完成)は J1基準を満たしません。鹿児島市は2017年から新スタジアムを検討してきましたが、有力候補地が次々に頓挫し、 8年たっても着工どころか基本計画すら固まっていません[1]

この事例が示すもの ①都心の一等地を狙うがゆえに用地選定が難航し、二度も白紙化したこと ②残る2案はいずれも200億円超で、しかも駐車場146台という規模と設備のアンバランス ③国庫補助・企業版ふるさと納税・民間資金を掲げつつ、県は財政負担に慎重で分担が未合意なこと。
8
検討開始から未着工の年数
215〜293億円
残る2案の総事業費
146
計画上の駐車場(約1.56万席に対し)
TIMELINE

時系列(2017 → 2026)

2017年3月

市の整備検討協議会が初会合

県・市・競技団体・観光関係者らで構成する「サッカー等スタジアム整備検討協議会」が発足し、初会合。新スタジアム検討がスタートする。

出典:鹿児島市サイト/報道まとめ
2017年8月25日

県がドルフィンポート跡地を候補から除外する考えを表明

協議会で県側が「所有者の県としては、ドルフィンポート敷地にサッカースタジアムの立地は考えていない」と明言。景観保護などが理由とされた。

出典:ドメサカブログ(協議会報道)
2018年1月

協議会が立地報告書を提出(候補地3案)

ドルフィンポート跡地・住吉町15番街区・浜町バス車庫を候補地として提示。「都心部が望ましい」との結論が示された。

出典:鹿児島市「多機能複合型スタジアムの整備検討」
2020〜2022年

県市対立が膠着——知事「スタジアムありきではない」

塩田康一知事が慎重姿勢を示す一方、県はドルフィンポート跡地で新総合体育館(アリーナ)構想を推進(2022年1月に構想案を知事へ提出)。スタジアムと土地が競合し、議論が停滞する。

出典:報道まとめ/ニコニコ大百科(参考)
2023年6月 ★

市がJリーグへ意向表明、候補地を「北ふ頭」へ

県市が改めて整備の意向表明書を提出。候補地からドルフィンポート跡地・住吉町15番街区を除外し、鹿児島港本港区「北ふ頭」を軸に据えた。

出典:鹿児島市サイト(経緯欄)
2024年2月 ★★

北ふ頭案を断念——候補地選定が再び振り出しに

2月、知事が市長へ「港湾計画の変更・港湾事業者の調整に多大な時間を要し困難」と伝達。市は北ふ頭整備の断念を表明した。北ふ頭案の浮上からわずか約8か月での白紙撤回だった。

出典:南日本新聞(2024.2)/鹿児島市サイト
2024年

サンロイヤルホテル跡地が新候補として浮上

鹿児島サンロイヤルホテルの移転表明を受け、その跡地(与次郎1丁目)が新たな候補地に。与次郎地区の2案(鴨池庭球場敷地/サンロイヤル跡地)へと絞られていく。

出典:南日本新聞(2024)
2025年(補正予算1,620万円)

候補2カ所の立地可能性調査を開始

市が候補地2カ所の立地可能性調査費1,620万円を計上。調査は2026年5月終了をめどとした。

出典:南日本新聞
2026年1月

整備賛同署名 100,302筆と要望書を提出

3団体が整備を求める署名10万302筆と要望書を市へ提出。世論の後押しが示された。

出典:鹿児島市サイト(経緯欄)
2026年5月29日 ★★

2案の概算事業費を市議会に報告——215億円/293億円

スタジアム本体は5階建て・延床約29,055㎡・約15,600席、本体工事費約162億円。これに、 鴨池庭球場案=移設費28億円を加え約215億円(供用2036年度)サンロイヤル跡地案=土地取得106億円を加え約293億円(供用2038年度)と試算。 両案とも駐車場は146台のみで、事業費の差は78億円だった。

出典:南日本新聞(2026.5.29)/KTS
2026年7月2日 ★

費用負担で県は慎重、市長「オール鹿児島で分担を」

県は「県の財政負担を前提としない」と慎重姿勢。下鶴市長は本体約200億円を念頭に「オール鹿児島(県・市・民間)での費用分担が必要」とし、早期協議を求めた。財源は国庫補助・企業版ふるさと納税・民間資金を想定するが、公費負担の分担すら未合意のまま。

出典:MBC/KYT(2026.7.2)/鹿児島市サイト
ANALYSIS

この事例が問いかけること

批判の視点 8年かけて候補地が二度も白紙化し、いまだ基本計画すら固まらない。残る案は200億円超なのに駐車場146台という詰めの甘さ。 「オール鹿児島で負担を」という掛け声はあっても、地権者の県は「財政負担を前提としない」。 枠組みが固まらないまま数字だけが膨らむ——公費投入の是非以前に、事業としての実現性が問われている。
反論・擁護の視点 都心の一等地にこだわるのは、まちなかスタジアムの回遊・再開発効果を最大化するため。10万筆の署名が示すように 県民の期待は大きい。国庫補助や企業版ふるさと納税、民間資金を組み合わせれば、市の実質負担は圧縮できる余地がある。

鹿児島のケースは、「作りたい」という熱意と「誰がいくら払うのか」という現実の間で、8年間答えを出せずにいる姿を映します。 負担の枠組みを先に固めずに規模の話が進む危うさは、多くの地方クラブに共通する教訓です。

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SOURCES

出典

  1. 鹿児島市「多機能複合型スタジアムの整備検討」(経緯欄)/南日本新聞(北ふ頭断念2024.2、立地可能性調査、2026.5.29 概算事業費)/KTS・MBC・KYT(2026.5〜7 報道)/ドメサカブログ(協議会報道)。※2019年前後の「最有力浮上」は年のみで日付未確定。市の提出資料原典は本調査で抽出できず、数値は地元報道に依拠。
進行中の案件を報道・行政公表資料に基づき整理したものです。金額・規模・時期・財源分担はいずれも未確定で、今後変動します。最新情報は鹿児島市・県の公表資料や地元紙などの一次資料でご確認ください。特定の個人・団体を誹謗中傷する意図はありません。