2024年に開業した街なかの専用スタジアムは、Jリーグ有数の成功例として語られます。しかしそこに至るまでには 約16年に及ぶ建設地の迷走があり、建設費256億円は公費で賄われました。「稼働率が低い」という批判は 正しいのか——事実に即して、この“成功例”の裏側を検証します。
エディオンピースウイング広島は、サンフレッチェ広島が20年以上求め続けたサッカー専用スタジアムで、2024年2月に開業しました。 街なか立地で観客動員も好調——「まちなかスタジアムの理想形」と評されます。しかし本サイトがこのクラブをあえて取り上げるのは、 「新しくてお洒落な専用スタジアム=民間がつくった」という誤解を正し、 成功例であっても公費・意思決定・汎用性という論点は残ることを示すためです[1]。
「都心(旧市民球場跡地)」を望むクラブと、「臨海部(みなと公園)」を推す行政の対立が長く続きました。
秋葉忠利市長の公約で「スタジアム推進プロジェクト」が発足。だが資金・候補地の壁に当たり頓挫する。
2012年のJ1初優勝を受け建設要望が高まり、2013年1月に37万0,579筆の署名を県・市に提出。
検討協議会が、都心の旧広島市民球場跡地と、臨海部の広島みなと公園(宇品)の2案に絞る答申。
知事・市長・商工会議所が「みなと公園が優位」で一致すると、サンフレは反発。2016年3月、久保会長が旧市民球場跡地案を独自発表し、 「建設費140億円に圧縮可能」「みなと公園での経営は債務超過に陥る」と主張して真っ向から対立した。
4者トップ会談で「両案にこだわらず再検討」で一致(=2案とも事実上白紙)。その後、中央公園の自由・芝生広場を新候補地に加えることで合意した。
クラブ案でも行政案でもない第3案に一本化。構想開始(2003年)から実に約16年を要した。 意思決定の長期化・非効率が、そのままこの事業の特徴となった。
2022年2月起工、2024年1月31日竣工、2月1日開業。2月10日のガンバ大阪戦で初試合を迎えた。構想から開業まで約21年。
ピースウイングは、しばしば「民間がつくった成功例」と誤解されます。しかし事業主体は広島市(公設)で、 運営をサンフレッチェ広島が指定管理者として担う形です[1]。
結論から言えば、新スタジアムの集客は低くありません。むしろJリーグ最高水準です。事実は事実として認めた上で、本当の論点を示します。
皮肉なことに、「稼働率・使い勝手の低さ」がより当てはまるのは、旧ホームの エディオンスタジアム広島(広島ビッグアーチ)でした。広島駅から遠いアクセスの悪さ、来場者の半数が自家用車利用なのに 駐車場が限られる問題、陸上トラックが観客席とピッチを隔てる臨場感の乏しさ、竣工30年超の老朽化—— これらが「都心の専用スタジアムを新設する」最大の理由になりました。旧スタは移転後、名称を変えて陸上・アマチュア用に存続していますが、 維持管理コストが今後の課題として残ります[3]。
広島は、税リーグ問題が「成功か失敗か」の二択ではないことを教えてくれます。 集客は大成功でも、公費の使い方・意思決定・稼働の透明性は、成功例だからこそ丁寧に検証する価値があります。 「良いスタジアムができた」ことと「公費の使い方が最適だった」ことは、分けて考えるべきなのです。