旅行大手HISは、雇用調整助成金(雇調金)の不正受給に関する調査報告書を公表し、新たに子会社2社で不正があったと認定されました。既に「ナンバーワントラベル渋谷」で約1.1億円の不正が発覚し、HIS本体も含め約62.5億円を返還済みです。
報告書によると、「クルーズプラネット」では社長が休業日に業務を指示するなどし、不正に約5.3億円を受給。また別の子会社でも独自の運用で不正受給があり、さらに14社で不適切な受給が確認されました。

HISの不正
■ 背景
雇用調整助成金(雇調金)は、企業が一時的に従業員を休業させた場合に、国がその休業手当の一部を補助する制度。新型コロナウイルスの影響で観光業が打撃を受け、多くの企業がこの助成金を活用してきた。
HISもコロナ禍において複数の子会社を含め雇調金を受給していたが、その一部が不正な方法で受給されていたことが発覚。
■ 発覚の経緯と対応
- 2021年、HIS子会社「ナンバーワントラベル渋谷」で、約1.1億円の不正受給が発覚。
- HIS本体でも不適切な申請があり、最終的に約62.5億円を国に返還。
- これを受け、社外の調査委員会を設置し、グループ全体での実態調査を実施。
- 2025年3月21日、調査委員会が報告書を公表。
■ 調査結果の詳細
1. 子会社「クルーズプラネット」での不正(約5.36億円)
- 「特別休業日」として申請した日に、社長が従業員に業務を指示していた。
- 当時の取締役が「目的は助成金狙い」などと記したメールを送信。
- 出勤日の申請を「半分程度に減らす」よう部下に指示するなど、意図的な操作が行われていた。
2. 別の子会社での不正
- 短時間勤務した日を「出勤」としてカウントせず、「休業」として申請。
- 独自の運用ルールを設け、不正受給を行っていた。
3. 子会社14社での「不適切な受給」
- 一部従業員が実際に出勤していたにもかかわらず、申請記録に反映されていなかった。
- 明確な意図がある「不正」とまでは認定されなかったが、制度の趣旨に反する受給があったと指摘。
■ 問題点と批判
- 経営陣の関与が疑われる証拠(メールなど)があり、組織的な不正の可能性。
- 不正受給によって、他の正当な申請者との不公平感が生まれる。
- 一部では「助成金ビジネス化」とも言える体質が指摘された。
■ 企業側の今後の対応
- 調査報告を踏まえて、再発防止策の策定が求められる。
- 厚生労働省との連携のもと、制度の適正な利用と返還対応を進める方針と見られる。
- 企業の社会的信頼回復に向けた説明責任と社内ガバナンス強化が課題。