不要な理由
- 財政リスク・税金の不確実性
- 新スタジアム建設・運営には初期投資と長期的な維持費(メンテナンス、人件費、設備更新など)が伴い、公共(県・市)の負担が大きくなる可能性がある。
- 岡山県自身も、近年は社会保障費や公共施設老朽化対応などのコスト増大を認めており、財政の余裕は決して十分とは言えない状況。
- 新施設が稼働しても収支が見合わない場合、赤字補填に税金が投入され続けるリスクがある。
- 公共施設としての汎用性・稼働率の不透明性
- サッカー専用スタジアムとして設計しても、試合以外で十分な稼働(コンサート、地域イベント、貸し会場利用など)を確保できるかが不確実。
- 地方の新設スタジアムでは「観客動員ありきで、日常的利用が手薄」になりがち、空き時間が多発する懸念。
- 利用者の多様性を考えず「サッカー専用」に偏った設計では、費用対効果が低くなる。
- 既存施設の改修拡張という選択肢を無視する危険性
- 現在の JFE晴れの国スタジアムを改修・増築することで一定程度キャパシティや快適性を改善できる可能性がある(構造補強、屋根追加、観客動線改善など)。
- 改修ベースでコストを抑える方針の方が、財政負担・リスクを最小化できる。
- 立地・アクセス・周辺インフラの課題
- 知事自身も「アクセスの良さ」が不可欠と発言しているように(「今の立地と同じくらいアクセス良くなければ意味がない」) 、新スタジアムを適切な場所に配置できるかどうかは大きな課題。
- スタジアム周辺の交通インフラ整備(道路、公共交通、駐車場など)も追加コスト・調整課題となる。
- 過疎地域や遠隔地に建てると集客性を確保できないリスクが高まる。
- 民意の操作・署名の限界
- 署名数が多くても、それだけで公共事業を正当化する根拠にはならない。「署名=賛成勢力の統計的代表性」をそのまま全面に据えるのは危険。
- 署名方式には重複・偽名・県外参加といったリスクも指摘されており、署名の正確性・信頼性を巡る疑問が残る。
- 逆に、反対意見を可視化・集約する機会が不充分であるため、反対派が声を上げにくい構造になる可能性がある。
- 先行事例・維持コストの教訓
- 他地域でのスタジアム・アリーナ整備では維持費・修繕費が想定を超えて膨らみ、赤字が地方財政を圧迫したケースがある(屋根補修、空調、電気・水道・設備更新など)※一般的なスタジアム建設リスク論。
- スポーツ施設整備において、国も「施設ストックマネジメント」の視点を重視しており、むやみに新設せず既存施設を有効活用せよという方針も示している。
- 期待と現実のギャップ
- スタジアム新設で「観客動員数増・地域の賑わい創出・街のブランド化」などの効果が語られるが、必ずしもそれらが実現するとは限らない。
- 観客需要は “J1維持力・試合の魅力・地域マーケティング力” に左右され、スタジアムだけでは解決できない要素も多い。
- 新スタジアム整備を “魔法の解決策” と見なすのはリスクがある。
論点を巡る相克・注意点(賛成側主張との対立点)
「不要論」を語るにあたって、相手(賛成派・推進派)の主張とぶつかる論点・反論可能性も押さえておいた方が議論は整理できます。
賛成派主張 | 反論/制約・検証すべき点 |
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キャパシティ不足の解消:現在のスタジアムではチケット完売が多く、観客を受け入れきれない | そうした“需要のピーク時”をもって常時フル稼働できると仮定するのは危険。平均稼働率を見れば、空き席が多い試合も出るはず。ピーク時の過不足だけを根拠にするとコスト見積もりが甘くなる。 |
地方発・地域活性化の象徴:新スタジアムを地域のランドマーク化し、にぎわい創出を期待 | 「象徴化」するなら運営の中身(イベント誘致、利活用計画、周辺開発との連動)が伴わなければ空虚。象徴だけで埋まる施設は赤字化リスクが高い。 |
収益+ネーミングライツ等で一定程度自己負担も可能 | 収益見込みを過大に見積もる危険。ネーミングライツや座席売上・広告収入は変動が大きく、固定費の変動を吸収できない場合がある。特に地方都市ではスポンサー支援可能額に限界がある。 |
署名数は強い民意の表れ | 署名はあくまで請願レベルの方法であり、事業決定を正当化するだけの民主的正当性を即座に付与するわけではない。署名精査、署名者の代表性、署名できなかった住民意見の無視などを考慮する必要あり。 |
既存スタジアムの限界 | 現行施設を改修拡張して対応できないかの検証を尽くすべき。新設が唯一の選択肢とする前に、コスト比較や技術的な可行性を慎重に評価すべき。 |
将来予測に対する信頼性 | 観客需要、イベント誘致、運営コストは将来変動しうる。保守的な見込みでないとリスクを見誤る。景気変動・世代交代・競技人気の変化など不確実性を織り込むべき。 |