M&A仲介・コンサルティング業界は急成長を遂げる一方で、法整備が追いつかず、一部で「抜き」や「不適切な契約」、さらには「資産収奪目的の買収(M&A詐欺)」が横行しています。以下に代表的な事例をまとめます。
1. 日本製造(ルシアン)事件:M&A仲介の「ダークサイド」
2023年から2024年にかけて大きな社会問題となった、中小企業の資産を収奪する目的で行われたとされる買収事件です。
概要
投資会社「日本製造(旧ルシアン)」が、多くの中小企業を次々と買収。その後、買収先企業の現預金を吸い上げ、取引先への支払いを停止させたり、計画的に倒産させたりする手法が取られました。
具体的な構図と関与
- 主体企業: 日本製造(代表:河丸氏などの名前が報じられている)
- 仲介会社の責任: ダイヤモンド・オンライン等の報道によれば、この「日本製造」に対し、多くの中小企業を仲介したのが、業界最大手の**「日本M&Aセンター」**を筆頭とする大手仲介会社であったことが指摘されています。
- 問題点: 仲介会社は「売り手」と「買い手」の両方から手数料を取る「両手取引」を行っていました。買い手が悪質な意図を持っていることを見抜く(デューデリジェンスの徹底)よりも、成約手数料を優先した「成約至上主義」が被害を拡大させたと批判されています。
2. 日本M&Aセンターによる「不適切会計」と強引な営業
業界最大手の日本M&Aセンターでは、組織的なコンプライアンスの欠如が露呈した事例があります。
概要
2021年、同社において売上高の前倒し計上などの不適切な会計処理が行われていたことが発覚しました。
関与と背景
- 組織体制: 当時の調査報告書では、過度な目標達成へのプレッシャー(ノルマ)が背景にあったとされています。
- 不適切事例:
- 契約書を偽造・改ざんして成約を偽装。
- 特定のコンサルタントが、成約を急ぐあまり、売り手側のリスクを十分に説明せずに契約を締結。
- 処分: この事件を受け、創業者の三宅卓社長(当時)らが報酬減額などの処分を受け、組織の浄化が図られましたが、業界全体の「高い手数料とノルマ」というビジネスモデルの限界を示す事例となりました。
3. 「マイスホールディングス」による連続買収とトラブル
「日本製造」事件と同様に、特定の買い手グループによる「蹂躙」として報じられている事例です。
概要
マイスホールディングスという企業が、大手仲介会社(ストライクなど)を通じて多くの中小企業を買い漁り、その後に買収先を倒産させたり、資金繰りを悪化させたりしたとして、元子会社から提訴される事態に発展しています。
注目される実名と組織
- 関与企業: マイスホールディングス
- 仲介責任: この買収を仲介した大手仲介会社(ストライク、M&A総合研究所など)の実名が、ダイヤモンド社の取材により「どの仲介会社が何件、悪質な買い手に紹介したか」というデータとともに公開されています。
- 問題の核心: コンサルタントが「買い手の資金調達能力」や「経営意欲」を精査せず、手数料目当てでマッチングを行った結果、長年続いてきた老舗企業が崩壊する悲劇が繰り返されました。
4. 悪徳M&Aコンサルタントの典型的な手法
実名を挙げられない場合でも、業界内で「要注意人物」とされるコンサルタントが用いる共通の手法があります。
- 「着手金」泥棒: 「あなたの会社は10億円で売れる」と過剰な期待を持たせ、100万〜500万円程度の着手金を取った後、まともなマッチング活動をせずに放置する。
- デューデリジェンス(調査)での情報漏洩: 買い手候補と結託し、売り手の機密情報をわざと漏らす、あるいは買い手に有利なように情報を操作する。
- 「直(じか)抜き」: 仲介会社を退職した元社員が、在職中に得た顧客情報を使い、個人や新会社で仲介手数料を安く提示して契約を奪う。これは法的には契約違反になることが多いですが、実態として横行しています。
まとめ:被害を避けるための防衛策
中小企業庁はこれらの事態を重く受け止め、「M&A仲介指針」を改定しました。
- 「両手取引」のリスクを理解する: 仲介会社は中立ではなく、成約させることが最大の利益であることを忘れない。
- セカンドオピニオンの活用: 提携している税理士や弁護士など、仲介手数料に依存しない専門家に契約内容を確認させる。
- 買い手の「実業」を確認する: 単なる投資会社や、短期間に数十社を買収している企業には警戒する。
引用参照:ダイヤモンド・オンライン(「M&A仲介のダークサイド」シリーズ)、中小企業庁「M&A仲介指針」
