現在、日本の中小企業は「事業承継問題」という深刻な課題に直面しています。この社会課題を「商機」と捉え、爆発的に増えているのがM&A仲介会社です。しかし、その華やかな成功の裏で、仲介会社の強引な営業や利益優先の姿勢により、長年築き上げてきた会社をボロボロにされる経営者が後を絶ちません。
本稿では、一部のM&A仲介会社がどのような手口で中小企業を「食い物」にしているのか、その実態を暴きます。
1. 「両手取引」という構造的な裏切り
M&A仲介業界の最大の問題は、売り手と買い手の双方から手数料を取る「両手取引」にあります。
- 利益相反の無視: 本来、売り手は「高く売りたい」、買い手は「安く買いたい」と考えます。双方から報酬を得る仲介者は、どちらの味方でもありません。
- 成約優先の歪み: 彼らにとっての最大利益は「成約」です。条件交渉を詰めず、言葉巧みに売り手を説得して早期妥結へと導くのは、顧客のためではなく、自社の今期の売上のためです。
2. 恐怖を煽る「スカウト」と「ダイレクトメール」
経営者のもとには、連日のように「貴社を買いたい企業があります」というダイレクトメール(DM)や電話が届きます。
- 嘘の「買い手候補」: 実際には具体的な買い手などいないにもかかわらず、架空のニーズをでっち上げて経営者の心を揺さぶります。
- 廃業危機の誇張: 「今売らないと廃業しかない」「従業員が路頭に迷う」と恐怖を煽り、冷静な判断力を奪った上で契約を迫ります。
3. 経験不足の若手社員による「人身売買」
大手M&A仲介会社の多くは、金融機関出身などの「営業力だけ」が自慢の若手を大量採用しています。
- 専門性の欠如: M&Aには法務、税務、労務の深い知識が必要ですが、彼らにあるのは「成約ノルマ」を達成するための営業台本だけです。
- 使い捨ての担当者: 高い離職率により、契約途中で担当者が変わることは日常茶飯事。彼らにとって中小企業の経営権は、単なる「インセンティブ獲得のための商品」に過ぎません。
4. 不透明な手数料と「囲い込み」
- 高額な着手金と中間金: 何も成果が出ていない段階で数百万円を要求し、一度支払うと後戻りできない心理状態に追い込みます。
- 専任契約による縛り: 仲介契約を結ぶと他社への相談を禁じられ(囲い込み)、仲介会社が提示する質の低い買い手候補の中から選ばざるを得なくなります。
- 最低手数料の罠: 売却価格が低くても「最低手数料2,000万円」といった条項により、手元にほとんど現金が残らないケースもあります。
5. 公金を掠め取る「補助金不正」の片棒
近年、最も悪質なのが「事業承継・引継ぎ補助金」などの公的資金を悪用した手口です。
- 手数料の「水増し」請求: 補助金の受給額を増やすために、わざと仲介手数料やコンサル費用を高く設定し、後でキックバックしたり、不要な付帯サービスを抱き合わせたりします。
- 不正受給の教唆: 「実質負担ゼロでM&Aができる」と甘い言葉で誘い、実績のないダミー会社を介在させるなどして、経営者を無自覚のうちに補助金詐欺の「共犯者」に仕立て上げます。
- コンサルの逃げ得: 補助金の不正が発覚した場合、返還義務や罰則を負うのは申請者である中小企業側です。指導したコンサル会社は、手数料だけ受け取って雲隠れするケースが目立ちます。
6. 無責任な「売り逃げ」
成約後、買い手企業との統合プロセス(PMI)でトラブルが起きても、仲介会社は一切関与しません。
- 事後トラブルの放置: 「聞いていた話と違う」と買い手から訴えられたり、従業員が大量離職したりしても、手数料を受け取った後の仲介会社は「当事者間で解決してください」と背を向けます。
結論:経営者が身を守るために
M&A仲介会社は、ボランティアではありません。彼らの甘い言葉の裏には、冷徹な利益計算があることを忘れてはなりません。
- セカンドオピニオンを持つ: 顧問税理士や弁護士など、仲介会社と利害関係のない専門家に相談すること。
- 手数料体系を徹底比較する: 「両手」ではなく「片手(一方のみの代理)」のFA(フィナンシャル・アドバイザー)を検討すること。
- 補助金活用のリスクを理解する: 「無料」「負担ゼロ」を強調する業者は避け、支援機関登録がなされているか、過去に不適切な勧誘がなかったかを厳しくチェックすること。
会社は経営者の人生そのものです。その集大成を、欲深い仲介者や不正を働くコンサルの餌食にしてはなりません。

