2024年度コンプライアンス違反倒産、過去最多の379件に
2024年度の「コンプライアンス違反倒産」は379件となり、過去最多を更新。4年連続で前年度を上回り、3年連続で300件を超えました。業種別では「サービス業」が最も多く、次いで「建設業」、「卸売業」となっています。違反類型別に見ると、「粉飾」が過去最多の101件でトップ。コロナ禍の支援策による発覚遅延や、その後の返済開始時期に表面化するケースが目立ちます。また、「不正受給」も2年連続で過去最多となる55件でした。
2024年度の全国企業倒産件数が11年ぶりに1万件を超える中、コンプライアンス違反倒産はその3.8%を占めています。雇用調整助成金の不正受給で経営破綻した企業の例を挙げ、コンプライアンス違反に対する社会の厳しい目が指摘され、法令順守の重要性が強調されています。

補助金不正受給による倒産は?
コロナ禍の雇用調整助成金など各種補助金の「不正受給」(55件、同14.5%)は、2022年度以降急増し、2年連続で過去最多となった。
コンプライアンス違反倒産とは?
企業が法令遵守(コンプライアンス)を怠り、不正行為や不祥事を起こしたことがきっかけで信用を失い、取引停止・資金調達困難・顧客離れなどを経て倒産に至ること。
◆ 主な違反内容の例
違反内容 | 概要 |
---|---|
労働関連法違反 | 残業代未払い、違法解雇、長時間労働の放置など |
脱税・税務違反 | 架空経費計上、消費税の未納、所得隠しなど |
助成金不正受給 | 雇用調整助成金などの虚偽申請や水増し申請 |
製品偽装・産地偽装 | 食品や製品の原材料や表示の虚偽記載 |
情報漏洩 | 顧客データや社員情報の管理不備による漏洩 |
建築・安全基準違反 | 法的基準を満たさない建築、作業環境管理不備 |
◆ 倒産に至る主なメカニズム
- 不正発覚
- 内部告発・監査・報道などで発覚
- 信用失墜
- 顧客・取引先・金融機関の信頼を喪失
- 取引停止
- 主要取引先から契約を打ち切られる
- 資金繰り悪化
- 銀行融資が止まり、資金調達不能
- 従業員離脱・顧客離れ
- モラル低下や企業イメージ悪化
- 倒産・廃業
- 法的整理や自主廃業に至る
◆ 実際の事例(代表的なもの)
企業名 | 違反内容 | 結果 |
---|---|---|
不二家 | 賞味期限切れ材料の使用 | 信頼失墜・業績悪化・経営危機 |
大王製紙元会長 | 会社資金の私的流用 | 社長辞任・株価急落・経営不安 |
タカタ | エアバッグのリコール隠し | 米国で巨額訴訟・最終的に破産申請 |
西武鉄道 | 虚偽有価証券報告書 | 上場廃止・企業グループ再編へ |
某社 | 雇用調整助成金不正 | 社会的批判・自主返還・経営悪化 |
◆ 倒産リスクの高い業種
- 建設業(労働安全、下請法違反が起きやすい)
- 福祉・介護(人手不足による法令違反リスク)
- 飲食・小売(衛生管理・食品偽装など)
- 教育・研修(労働時間・契約管理)
- 観光・バス業(労働時間・助成金関連)
◆ 防止策
- 社内ルールの整備
- 法令順守マニュアル、行動規範の明文化
- 内部通報制度の強化
- 社外窓口を設けて通報しやすく
- 社員教育の徹底
- 管理職へのコンプライアンス研修
- 第三者による監査
- 弁護士や外部監査人による定期的チェック
- 企業文化の改革
- 売上至上主義や隠蔽体質の是正
- トップの意識改革
- 経営者自らがコンプライアンスを体現
◆ まとめ
コンプライアンス違反による倒産は、単なる経営ミスではなく、「信頼の崩壊」による経済的破綻です。防ぐには、日常的な倫理・法令遵守への意識と、企業全体の体制強化が欠かせません。