コロナ対策で648億円が不適切

コロナ

前回の記事では50億円が不適切というのを投稿しましたが、やはりそれどころの金額ではありませんでした。

会計検査院は、昨年度の決算検査報告書で、税金の無駄遣いや不適切受給などが合計648億円以上にのぼると指摘しました。農林水産省が最も多く、次いで厚生労働省と国土交通省が続きました。新型コロナ関連では、50億円超が不適切支出で、東京のクリニックが不正に5.6億円を受給した例も含まれます。さらに、新型コロナ交付金の170億円が未返納で、総務省は確認体制の改善を検討しています。識者は、迅速な支出の際も事後検証の必要性を強調しています。

ーーー元記事

公金648億円余りが不適切取り扱いと指摘 会計検査院

国の予算の使われ方を調べる会計検査院が昨年度の決算検査報告書をまとめ、新型コロナウイルス対策に関わる事業で大規模な不適切受給が見つかるなど、合わせて648億円余りが不適切に取り扱われていたと指摘しました。

会計検査院 “税金のむだづかい” 指摘 648億円余り

会計検査院の田中弥生院長は、6日午後、各省庁や政府出資法人を調べた昨年度の決算検査報告書を石破総理大臣に提出しました。

報告書で税金のむだづかいを指摘したり改善を求めたりしたのは、345件、合わせて648億円余りに上りました。

省庁別では、農林水産省が353億4000万円余りと最も多く、次いで、厚生労働省が77億6000万円余り、国土交通省が23億2000万円余りでした。

また、厚生労働省などが行った新型コロナ対策関連事業で、98件、合わせて50億円余りが指摘を受け、東京のクリニックが5億6000万円余りの補助金を不適切に受給していたことも明らかになりました。

今回の報告書について、田中院長は「いずれも私たちの経済・社会活動や日常生活に影響するものなので、ぜひ国民の皆様にも知ってもらい、国の予算編成や決算の審議、行政の改善に役立ててほしい」と話していました。

新型コロナ交付金めぐる不正受給 170億円余りが返納されず

今回の報告書で、感染対策などに取り組む自治体に支給される「新型コロナ交付金」をめぐり、会計検査院や都道府県などが昨年度までの3年間に不正受給などを指摘して国庫への返納を求めた205億円余りの83%にあたる170億円余りが、いまだに返納されていないことが明らかになりました。

さらに、このうち10億円余りについて、制度設計した内閣府も交付の実務を担った総務省も、返還されていないことを把握していなかったことも明らかになりました。

総務省は「未返納の額を定期的に確認する仕組みを整えていなかったことが原因なので、今後は関係省庁や都道府県などと連携して、確認する仕組みを作りたい」としています。

会計検査院トップ「共通の課題として事後検証の問題」

会計検査院のトップ、田中弥生院長が報道陣の取材に応じ「コロナ対策と物価高騰対策の検査では、令和2年度は布製マスクや持続化給付金、令和3年度は95兆円のコロナ関連予算、令和4年度では2兆4000億円を投じたコロナワクチン調達の課題を明らかにしていて、この4年間で84の事項について報告した」と説明しました。

そのうえで「共通の課題として事後検証の問題が見て取れる。ことしの指摘案件でも、生活困窮者向けの特例貸し付けで緊急対応として通常は提出が求められる書類や面接を省略したため、対象ではない生活保護受給者に貸し付けが行われたことが判明した」と指摘しました。

さらに「会計検査院の報告の内容はいずれも私たちの経済・社会活動や日常生活に影響するものなので、ぜひ国民の皆様にも知っていただき、国の予算編成や決算の審議、行政の改善に役立ててほしい」と述べました。

識者 “行政機関は『走り終わったらすぐ検証』意識必要”

元会計検査院局長 有川博さん

国の会計実務に詳しい元会計検査院局長の有川博さんは「新型コロナ対策の事業は、とにかく早く進めなければならなかったため、チェック体制や確認すべき資料の収集を省略し、問題が発生するリスクを抱えたまま執行した。こうした場合、行政機関は、事業の目的を達成できたか後で確認できる体制をとらなくてはいけないが、それができていなかったことが4年目となる今回の検査報告からも明らかになった」と指摘しました。

そのうえで「これからも、緊急の対応を求められ、必要な確認作業をある程度省略して事業展開しなくてはならない事態が発生するおそれはあるので、行政機関には、これまでの教訓を踏まえて、『走りながら考える』、『走り終わったらすぐに検証する』という意識でリスクの分析と早急な見直しを進める姿勢が求められる」と話していました。

報告書 “コロナ禍の交付金や補助金に大規模な不適切受給”

今回の報告書で会計検査院は、コロナ禍の中で厚生労働省が感染防止や医療提供体制強化のため都道府県や医療機関に拠出した交付金や補助金で5億円を超える大規模な不適切受給が見つかるなど、21億9000万円余りが不適切に交付されていたと指摘しました。

問題が発覚した東京のクリニックは

問題が発覚したのは、東京・中野区にあるクリニックで、新型コロナの感染が拡大する中でインフルエンザも流行する事態に備えて、専用の診察室を準備し発熱外来の態勢を整えるなどした医療機関を支援する補助金を不適切に受給していました。

このクリニックは14の診察室を確保し、令和2年10月から翌年3月まで土日祝日や年末年始も含め休むことなく、164日間にわたって上限一杯の1日7時間ずつ体制を確保して、4万5920人の患者を受け入れる計画を立て、108人診察したと報告して、6億1000万円余りを受け取っていました。

しかし、会計検査院が現地や提出された書類を調べたところ、クリニックがあるのは広さ62平方メートルのマンションで、診察室とされた14部屋のうち2つはトイレと洗濯機を置くための区画で、残り12部屋は事務室や診療に使っていないスペースをパーティションで区切っただけで、感染防止のための空間的な分離ができていなかったということです。

会計検査院は、報告どおりの実態を確認できなかったとして5億6000万円余りは不適切な受給だったと認定し、これを受けて厚生労働省は、このクリニックに加算金を含め7億7000万円余りを返納するよう求める行政処分を行いました。

このクリニックは、厚生労働省に対し「トイレなどのスペースも診察室として使おうと思っていた。補助金の要綱や解説資料の解釈を誤った」と弁解していたということで、NHKの取材に対し「コメントできない」としています。

識者 “事業悪用など問題発生の原因を分析して改善を”

元会計検査院局長 有川博さん

国の会計実務に詳しい元会計検査院局長の有川博さんは、今回明らかになった補助金の不適切受給について「新型コロナの緊急対応では、チェック体制や資料収集などを省略して事業を早く進めなければならない中で、最低限、事業の目的が達成されたかどうかをあとで確認できる体制をとっておかなければならなかった。医療機関の申請のまま支給していたという点で、行政に落ち度があったと言わざるを得ない」と指摘しました。

そのうえで「今回のような事態が起きることは、制度設計の段階で行政も予見できたと思うが、リスクに対するマネジメントがきちんとできていなかった。緩い制度設計のもとで事業が悪用されるケースは今回の事態に限らず指摘されており、問題が発生した原因を分析して改善につなげていかなければならない」と話していました。

タイトルとURLをコピーしました